トラ、ありがとう。
君が僕のもとにやってきたのは17年前の春だった。
鉛筆みたいに細くて小さい身体で歩き回り、本当に可愛かった。
君はたくさん食べてどんどん成長し、
オオトカゲの名前にふさわしい2メートル近くの大きさになり
僕がつけた呼び名の通り強く美しく成長した。
体重はなんと7キロもあった。
温室を訪れた多くの人たちは怖がったりしたけれど
きっと君の堂々とした黄色い身体の美しさに圧倒されて
その優しい目を見なかったんだね。
温和な君は僕を困らせることは一度もなかった。
君は僕に気が付かせてくれたんだ。
爬虫類にだってちゃんとした心があり、理性があり、
それどころか知性すらあることを。
自慢だったんだよ。
君は僕の自慢の娘だった。
やんちゃ盛りの頃はおもしろかったよ。
テレビ局でデビィ夫人のドレスに
ウンチをひっかけてしまった時は大変だったね。
動物好きの方だからすぐに許してくれたっけ。
新しい温室のプールではしゃぐ君を見た人たちは
「トカゲが喜ぶのをはじめて見た!」と言って驚いていたね。
戸を自分で開けて僕の蛙コレクションを全部たいらげてしまったこともあったね、
君にはごちそうに見えたんだろう、美味しかったかな。
オオトカゲが42度のお風呂が好みだったなんて
君に教えてもらうまでは知らなかった。
温室の排水溝の穴を覗くのが好きだったね、何を見ていたのかな。
長く一緒にいたから、いろんなことがあったね。
うん、でも、そうなんだ、
僕は知らなかった。
というか気が付かなかった、
いいや、すっかり忘れていたんだ。
<君にも寿命があることを。
いつまでも、これからもずっと、
一緒に暮らしていけると思い込んでいた。
17年間、たのしかった。
トラ、今まで一緒にいてくれてありがとう。

トラは17年前に大変に珍しいミンダナオ・オオトカゲの
“ハイポメラニスティック突然変異個体”
という名目で私の温室にやって来ました。
その後、サルバトール・オオトカゲのSSP.であることかが判り
サルファ・モニターという名前で
呼ばれるようになったのは最近になってからです。
さて、皆さんもご存知のように
私は相変わらずたくさんの動物たちと暮らしています。
多くの動物たちは人間よりも短命ですから
それはもう本当にたくさんの別れを経験してきました。
ここに来ている皆さんならお解りでしょうが
イヌ、ネコ、などの生活に密着している温血動物との別れは
<自分の内臓が引きちぎれるかと思うくらい悲しく苦しくつらいことです。
実は同様に、ヘビやトカゲやサカナなどの場合でも
長く一緒に暮らした場合には、
なんというか、そうです、
やはり、かなりの悲しみが襲い掛かるものなんですよ。
いやはや、今回もきつかった、暗い気持ちになった。
でも、私はいつも皆さんに言っているんです。
今までの楽しい思い出から
お別れの悲しみを引き算してごらんなさい、と。
それでマイナスの気持ちになるようなら次の子を飼うのをおやめなさい、
楽しかった思い出が別れの悲しみよりも勝っているならば
早く次の子をお迎えしなさい、と。
というわけで。

ジャーン!
新しいトラの登場です。
生後10か月~。
全長、たったの50センチ~。
重さは・・・計っていないけど
なんかテレビのリモコンくらいしかない~。
チビだ、チビすぎる。
もう少し
大きくなったらトラの住んでいたプール付きの部屋に入れますが
それまではこのベビールームで育てます。
まだチビオオトカゲの二代目トラですが、
頑張って大きく育てますのでご期待ください。